You are at [Menu] / [Album Review]
成田忍のプロデュースによるデビュー作。この後の数枚と異なり、実験的で曲調のヴァリエーションに富む。KATE BUSHを意識したかのようなサイケ風味のGtも良い味を出している。これらも70年代英国ロックの美意識が入っているが、次作とは微妙に異なり拡散美を追及した作風と言える。
「花ざんげ」の憂いと現実的な肉体感のある恋愛物語の歌詞はこの後は暫く見られないものであり、世間一般的な「遊佐未森像」とは完全に座標が一致していない面も多々存在する。実際、外間隆史は本作を余り快く思っていない事を示唆している文献も存在している。
CD:32・8H-5009 1988/Apr/1 (P)(C)1988 CBS/Sony Group
LP:283H-5005 1988/Apr/1 (P)(C)1988 CBS/Sony Group
MT:28・6H-5009 1988/Apr/1 (P)(C)1988 CBS/Sony Group
外間隆史が最もエゴを発揮した本作は作詞、作曲、編曲、さらに装幀までが芸術に登り詰めている。例えばタイトル曲はインストなのであるが、そのメロディーの音階が「ソラミミ」になっている。そして本作付属の童話で登場人物達が聴いたメロディがこれになっている。という具合に、音楽、文章、映像が有機的に結合しており、かなり練り込んで細部まで描き込んだ作品である。
楽曲としては、70年代英国ロックの良い意味での引用が見られ、作曲者の趣味が伺える。70年代英国ロックのノスタルジーを感じさせる「窓を開けた時」「旅人」「風の吹く丘」、そして初のTVクリップになった「星屑の停留所」これらを、「陽」の部分とすれば、成田忍作曲の夢想感漂う「ひまわり」や遊佐作曲のゆったりとした「川」が「陰」の部分を担当しており起伏のある構成になっている。
リズム隊の音が大きく、手数も多い。遊佐の歌声も硬く、緊張感が漂う音である。
CD(限定盤):35・8H-5046 1988/Oct/21 (P)(C)1988 CBS/Sony Group
CD(普及盤):32・8H-5079 1989/Apr/7 (P)(C)1988 CBS/Sony Group
今まで遊佐ファンを獲得するのに最も貢献した作品。楽曲的には前作の流れを踏襲しているが、アレンジでは若干ロックの躍動感が後退してフォークっぽい優しい音作りとなった。
ジャケットのオルガン風の樹が「ハルモニオデオン」なのであるが、その樹と周囲の人々をモチーフとした楽曲と小説、そして写真集が含まれる見事なコンセプトアルバムである。難癖を付けるとすれば曲順だろう。多重コーラスを使った「ハルモニオデオン」をアルバムの最初と最後にしたいのと、元気な「0の丘∞の空」の前の曲群がちょっと寂しすぎる事であろう。
本作からは永遠の名曲「僕の森」が生まれている。絶品のスローバラードでステージでも欠かせない曲となるのだが、このイメージの呪縛から逃れるのが難しくなってしまった。
CD(限定盤):32・8H-5721 1989/Sep/21 (P)(C)1989 CBS/Sony Group
CD(普及盤):ESCB-1006 1989/Oct/8 (P)(C)1989 CBS/Sony Group
外間隆史プロデュースの最後のアルバム。2nd、3rdを特徴づけていた外間隆史の童話も付属してるのだが、作品のモティーフではなくなり、コンセプト性は若干薄れた。これに関連してか、気負った作風から離れて、大仰な厚い音作りながらリラックスした曲調になっている。遊佐の自作曲も増えてきクオリティーは外間隆史には勝てないものの、かなり良くなっている。
意外にも5分以上の大曲が大半を占めているが流れの良さか、曲が長いと感じさせない。「雨上がりの観覧車」「野の花」等は大曲であり、現在でも人気曲である。遊佐の声も柔らかく甘くなり、優秀なポップとロックの融合と言える。
また、遊佐が好きなグループとして挙げているSplit Enzのメンバーがレコーディングに参加している。
CD(限定盤):ESCB 1093 1990/Sep/21 (P)(C)1990 CBS/Sony Group
CD(普及盤):ESCB 1093 1990/Sep/21 (P)(C)1990 CBS/Sony Group
外間隆史と決別して中原信雄を中心として作成されたと思われる本作は、これまでの厚い音作りとは異なり淡泊な印象を受ける。複雑なコーラスと歪んだギターは大幅に減った。
アナログ時代であれば、A面が小曲集、B面が組曲と言うべき構成である。遊佐が大半を作詞作曲した「Language of flowers」は23分の大曲であり、その中の変拍子を最大限に利用した「われもこう」は中々面白い。またラップ、スクラッチをも取り込んだ「すみれ」など大胆な実験的手法を取り入れている。
やや「実験のための実験」という面は拭えないが意欲的な作品である。また、特殊装幀盤が発売された最後の作品である。アニメとのタイアップ曲が2曲もあるが、これが新規のファン獲得に役立ったかは不明である。
CD(限定盤):ESCB 1235 1991/Sep/21 (P)(C)1991 Sony Music Entertainment
CD(普及盤):ESCB 1235 1991/Sep/21 (P)(C)1991 Sony Music Entertainment
今までの周期的なアルバム製作から外れて発売された初のベスト盤。既発の各アルバムからバランス良く、かつ代表曲を収録しており、初心者にも良いかも。
また、当時のライヴの定番でありながら、廃盤CDs「夏草の線路」のカップリングの為、音源として入手難であった「真夜中のキリン」が収録されている。
「ライヴ盤が出ると音が変わる」という法則があるが、遊佐の場合は次作で大幅に音作が変わる。創造者として充足していれば、「場つなぎ」のベスト盤やライブ盤を出す時間は無駄である。実際には次作への充電期間と考えられる。
CD:ESCB 1334 1992/Nov/1 (P)1988.1989.1990.1992 Sony Music Entertainment (C)1992 Sony Music Entertainment
暫くの沈黙を破って発表された本作は今までのロック的手法を一掃したものである。リズムは打ち込み主体、Gtは厚いリフを使わず複雑なメロディーを駆使するTipo
歌詞は空想世界から離れて現実の生活からインスピレーションを受けて作った物に転換してきている。楽曲も1stの様に拡散美を追及するように変化し、Peter Gabrielの影響が濃厚な「土の話」、メロディーラインを廃棄した人力テクノみたいなPops「月夜の散歩」、童話のような「ブルッキーのひつじ」と盛り沢山である。
「遊佐未森」の特徴的なロゴも本作では新しい物に変わっている。
CD:ESCB 1398 1993/May/21 (P)(C)1993 Sony Music Entertainment
アイルランド出身のNIGHTNOISEがバックを全面的に務めたミニアルバム。
打ち込みも若干あるが基本的にはアコースティックなサウンドであり、96年にブームとなったアイリッシュサウンドの先駆けと言うと誉め過ぎか。
良い意味でのノスタルジーに溢れるサウンドと言える。半面、歌詞世界の現実化は大幅に進行しており、素直な恋愛感情を唄ったものが主体となっている。故に歌詞を重視するファンには好き嫌いが分かれる作品だと思う。
CD:ESCB 1428 1994/Mar/21 (P)(C)1994 Sony Music Entertainment
「遊佐未森、新境地。」まさに言いえて妙な帯叩である。ロックサウンドへの回帰とも思える躍動的な「Floria」から始まり、テクノハワイアン「恋かしら」へ繋がる辺りは本作のコンセプトである「楽園」を見事に描いている。「静から動」「森から海」への移行を上手く遂げている。
と言いたいのだが、ジャケット全面から発散されている「楽園」のコンセプトがアルバム全体を覆っているとは言えず、後半はシングルの寄せ集めの印象を拭えない。これは複数のプロデューサを起用して作風がばらばらになってしまい、一本筋が通った感触が無いからだろう。最後の「Diary」だけが初期遊佐未森の作風でかつ、異常なまでにQUEEN風なのが笑いを通り越して感動的ではある。「太陽とアイスクリーム」のアレンジはこの後ライヴで演じられるアンビエント物の萌芽だったのかも知れない。
CD:ESCB 1522 1994/Sep/21 (P)(C)1994 Sony Music Entertainment
本作は打ち込み、テクノな音作りから若干アコースティックなサウンドへ戻った印象を受ける。正確に言うとアコースティック風打ち込みサウンドなのであるが。
コンセプトは存在するが音世界を構築するほど堅固で明確な物ではなく、一つ間違えると「コスプレ」な濃厚な世界が苦手な人でも聴き易い作品とも言える。幻想的な外間隆史作曲の作品と、元気で現実的な遊佐作曲の作品が適度に配合されており通して聴いても疲れないアルバムである。
異色なのはスピッツの草野正宗による「野生のチューリップ」である。遊佐の割り気味な発声方法の歌唱を聴くことが出来る。
CD:ESCB 1718 1996/Jan/21 (P)(C)1996 Sony Music Entertainment
ここ数年の打ち込み作風から離れ、Nightnoiseとの共演となったアルバム。「水色」がNightnoiseに遊佐が加入した印象なのに対し、本作は音楽的主導権は遊佐が握っている印象が強い。安直にケルト・ミュージックを導入し、流される作風になっていないのは遊佐の独自性を確立したからであろう。抱擁的で普遍的な愛を歌う「ロカ」と私小説を感じさせる「あけび」といった大きな2本のコンセプトが根本にあるようだ。遊佐の作曲能力もかなり向上しており、全般的に大人しい曲調ながらも落ち着いた美しさを感じさせる傑作である。
CD:ESCB 1799 1997/Feb/1 (P)(C)1997 Sony Music Entertainment
東芝EMIに移籍後の本作は前作の民族音楽への傾倒を素直に進化させた様な作風である。移籍が音楽性の相違よりマネージメントが原因なのであろう。
本作は音の重量感は無いが各楽器が宙を舞い万華鏡の様な仕上がりになっている。ミキサーの力量だと思うが、帯域が衝突する場所が無く、音質は大変良い。
しっとりとした「タペストリー」と元気な「レモンの木」のシングル曲は大変良いが、残念ながら遊佐作曲ではない。ただし、「エコー」「水の中」は遊佐の得意とするスローで素直な曲で、得意分野に専念している感じだ。
CD:TOCT-10191 1998/Feb/11 (P)(C)1998 Toshiba EMI Limited
CDが手元に現在無いため、保留。
????
民族音楽との融合に成功して、安定路線に乗るかと思わせたが本作はバンドの音作りを積極的に推進した作品になった。この作品は音数は多くない。拡大しても数えられる楽器は増えないのであるが、代わりに個々の音が太い。ライヴのメンバーがそのままレコーディングしている為か音の個性も強く、誰が演奏しているか良く分かる。
歌詞「僕の森」+曲「タペストリー」=「ポプラ」なのかも知れないが、この作品の良さは素直に評価したい。「火星水路」が一部歌詞の練りが足りない気がするが、全体としては優秀なポップスである。
手放しで褒めたが、「バンビ」「ボーダーライン」の2曲の立場は微妙である。曲順からはボーナストラックの様な扱いであるし、遊佐作曲作詞の「バンビ」はまだ良いとしても、「ボーダーライン」は完全に浮いている。「バンビ」は曲、歌詞とも遊佐らしい作品である。とすると、この曲の売りは斬新なアレンジにあるのか。?つまり、この実験が将来につながるのか、という事である。
CD:TOCT-24104 1999/Mar/10 (P)(C)1999 Toshiba EMI Limited