The Soramimi Rock Music Museum

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Tapestry Promotion Filer (Text Part)


1988年のデビュー以来、
遊佐未森は、歩み続けました。

国内の、そして海外のアーティスト達とのコラポレーション。
ロンドン、カナダ、オーストラリア、イタリア、
そしてアイルランドなど様々なフィールドでのアルバム制作。
l0枚のアルバムと23枚のシングルのリリース。
数多くのライプ・バフォーマンス。
ひとつひとつの出会いと経験は、
澄んだ歌声をより力強く成長させてくれました。

l998年に迎えるデビューl0周年を前に、
遊佐未森は、東芝EMIから
新しいステップを路み出します。

この秋の、スコットランドでのアルバム・レコーディングと、
l0月のシングル・リリースが、
その第一歩です。

どうぞ、ご期待ください。


 いつでも自然体の人だなと思う。へんに着飾ったり塗りたくったりするよりも、遊佐さんは普段着のまま素顔でいることの素敵さや心地よさを知っている人なんじゃないかな。実は、それがいちばん難しくて、やっかいなことなんだけれど。でも、もしそう伝えたとしても、彼女は、ふふふ…そんなことないですよぉ、と言って、小さく微笑みをかえすだけだろうな、きっと。
 それにしても遊佐さんと話していると、彼女のまわりに標う穏やかな空気に採り込まれて、妙にほっとしている自分に気づくことがよくある。それはハーブティを飲んだ後の、おなかの辺りがホッカホカして、気持ちがゆっくりと落ちついてきて、自分自身に優しくなれそうな気がしてくる、あの感じに、とてもよく似ている。そういえば、遊佐さんは紅茶やハーブティが好きだったっけ。
 '88年にシングル「瞳水晶」でデビューした遊佐さんは、あと半年でデビュー十周年を迎える。これまでに23枚のシングルと10枚のアルバムを発表し、穏やかなうねりを持つ叙情的なメロディに、伸ぴやかな歌声が溶け合った独特の世界観を構築してきた。その彼女がデピュー十周年を前にレコード会社を移籍。新たな大地に根を下ろして制作したニュー・シングルが「タペストリー」である。

 タペストリーとは、色とりどりの糸で風景や人物を組り込んだつづれ織りのこと。丹念に織り込まれていくタペストリーは、織り人の気持ちや感性が“時”とともに編み込まれた創造物である。例えば、もしも時の流れを“横糸”に、日々の暮らしの中での出来手を“縦糸”にしたタペストリーがあるとしたら、そこにはその人の人生そのものが織り込まれているように思う。悲しいことも、つらいことも、悩んだことも、そしてたくさんの楽しいことも、しっかりと織り込まれている。そしてこのタペストリーからは、紡いだ糸の隙間を通して、その人自身の歩んできた道のりまでも感じられる。彼女の歌を聴きながら僕はそんな人生のタペストリーを思い浮かべていた。“まっすぐな道をタペストリー つかのまの恋も色褪せないそのままで編み込まれてゆくの”
 “時をのせて タペストリー いつかは朽ちても 陽に灼けた壁の跡 幻を残して…”
 「タペストリー」を聴いて感じたのは、人としての大きさや力強さだった。もちろん穏やかなメロディと透明感のある歌声にかわりはないのだが、しっかりと根をはった樹木が大自然の驚異や偉大さを知ったうえで、大地にすっくと立っているように、人間的な大きさや凛とした強さがそこから感じられたのだ。以前、彼女とアカシアの木について話したことを思いだす。ベランダで観葉植物とハーブを育ててるんです、という話しから、いつしかアカシアの話しになった。ふつう樹木は地面から養分を吸い上げるだけなのに、アカシアは地中に養分を与え、大地を潤わせる働きをすると、彼女は言っていた。その時、もしも大地が今の世の中で、そこに住む僕らだとしたら、彼女はアカシアの木のように音楽を通して、僕らに潤いを与えてくれているのではないかと、ふと思ったものだ。
 このところ悲しい出来事や事件が統いている。こんな時代だからこそ、彼女の歌が必要なのだと思う。アカシアの木のように心の大地を潤わせてくれ、そしてハーブティのように気持ちを落ち着かせ、あたたかくしてくれる彼女の歌が、今とっても必要なのだ、と…。


ものかき 伊藤博伸


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