The Soramimi Rock Music Museum

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1997 March 14th. Orchard Hall


roka concert memories of Ireland

〜新聞告知より〜

 roka memories of IRELAND

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 試行錯誤を続けていた遊佐未森が「roka」を発表した。アイルランド勢を豪華に起用した傑作であり、ツアーにも期待が高まっていた。
 今回のライヴは以前共演したNightnoiseのメンバーと日本勢とのコラボレーション(collaboration / 協力、共同製作)という事である。当然、「roka」中心の選曲になるのであろうが、他には何を演るのであろうか。?

 開演時間暫くして、上手より、渡辺等(Bs)、鈴木達也(Ds)、冨田恵一(Kb,Gt)の日本勢、下手より、Micheal O Domhnaill(A.Gt)、Triona Ni Dohomhanill(Pi,Kb,Vo)、Ronan Browne(Fl,Pipe)、Brian Dunning(Fl,Tin whistle)が並ぶ。静かに始まる“Hugh”のイントロ。これを何回も引っ張り期待を盛り上げる。そして舞台後方中央から遊佐未森登場。“ハモニカ海岸”を歌い終え、拍手の中、鈴木のカウントと共に“roka”に一気になだれこむ。遊佐は途中で入る所を間違えてしまうがご愛嬌だ。立体的なコーラスがとても格好良い。いきなり会場は総立ち、ではないが、ちょっと盛り上がる。

 MCで遊佐が「ナンには何にもナ〜ン」という受けないギャグをカマしてくれる。(笑)渡辺が思わずコケてしまう。タイの旅の思い出を歌う“素肌”、再びMC。幼少の時、遊佐が自転車を祖父にプレゼントして貰った思い出を語り“アケビ”そして“優しい歌”アルバムに忠実な演奏である。
 メンバー紹介である。Trionaの「ワタシハ、ニホンノヒトガダイスキデス。」というMCは水色ツアーでも先日の来日でも言っていたぞ。John Wettonの「キミタチ、サイコダヨ」と同じだな。(笑)冨田が一番最後に紹介されていたが、彼が今回のバンマスになるのであろうか。?

 遊佐が英語で歌う“Island of hope and tears”以前の水色ツアーでも歌っていたが今回は英語版。相変らず美しい良い声だ。そして、遊佐の十八番になってきた“砂山”出だしは原曲に忠実に歌うがドラムが入ると軽くSwingして軽快に聴かせてくれる。Trionaがコーラスに回るが、日本人と解釈が全然違うコーラスで面白い。見事なコラボレーションである。
 そしてNightnoiseの“At the races”をアイルランド勢で演奏。後のMCによれば、これは競馬を題材にした曲とのことである。遊佐は衣装替えで引っ込む。

 さてここから後半戦。遊佐がNightnoiseとの出会いを語り、“クローバー”を演奏。遊佐はヴォーカルに専念して、Trionaがピアノを弾く。奇をてらうこと無く、忠実に弾いている。ちょっとだけトリルの解釈が違うけど。(笑)“アカシア”“潮見表”と静かに続く。“潮見表”で渡辺のベースが心地好く響く。まるで海に浮かんでいる様な気分になる。

 「静かな曲が続いたので、アップな、アッパーな曲を演ってみたいと思います。」というMCで始まったのは“Forest Notes”前回は徹底的に解体、再解釈された曲であるが、今回は大人しい演奏である。イントロに出てくるKbのアルペジオはパイプで演奏している。Trionaは殆どお休み。次に“夏草の線路”となる。アレンジの基本としてメロディーがあるキーボード系のフレーズをフルートとパイプに回している。成程、確かにこの曲はリード楽器(多分、Digi Horn)の音が入っており、それを忠実に再現していると言える。が、なんか変だ。暫く聴いていて分かったのだが、Michiealの意地になってるような(笑)空間を埋めまくるアコースティックギターのリフと鈴木の爆発力が無いドタバタとしか聞こえないドラムが原因ではないであろうか。ここでは冨田が最後にギターソロを弾いた。アクションも決まっており、スタジオの人という印象が強かった彼であるが、実はロック魂に溢れている事が判明。
 残念だが、鈴木のドラムの平坦さが“Forest Notes”では良く作用していたが、これ以降は邪魔にしか聞こえない。
 しかし、場内は大受けである。おいおい。昔の曲を演ったから受けているのか?謎だ。

 「久しぶりに“夏草”を演ってしまった!次はもっと懐かしい曲を演ります」というMCで“風の吹く丘”だが、違和感あり過ぎ。なんじゃこの演奏は?しかし、この辺からPAの音量が上がったお陰か、アコースティック・ギターがエレクトリック系の前に吹き飛んでしまい、違和感が減る。でも、こういうのはコラボレーションとは逆だと思うのであるが。“Floria”は打ち込みからロックのリズムに移行する解放感が決め手の曲であるが、今回は鈴木のベッタリとしたドラムの為かリズムが異常に重い。まるで「赤いジャムの中で泳ぐ」みたいだ。窒息しそうだ。が、ここで冨田は大爆発。ギターソロは決めまくりだ。ロック老人には嬉しい。

 なんとか気を取り直して“0の丘∞の空”である。原曲はアコースティックギターを十分使っているためか、Michealも上手くはまり好演である。アイルランド勢と日本勢のソロ合戦も盛り上がる。
 「次はPDD!“午後のかたち”を聴いてください。」と場内総立ちのまま“午後のかたち」を演奏。「roka」の一番楽しい曲を最後に持ってきた。遊佐はステージを左右に歩き、客席に手を振っている。アイドルのコンサートみたいで微苦笑。

 暫くのアンコールのコールで一同再登場。“Do you love an apple?”が演奏される。これはNightnoiseの前身バンドの曲で、Trionaが教わった曲という事から、トラッドなのかも知れない。1番は遊佐が歌い、2番はTriona、3番は2人のヴォーカルが美しく溶け合う。至福の瞬間である。「最後に私達にとって懐かしい曲を演ります」と言って“川”である。あの印象的なメロディーはパイプとフルートによってノスタルジックに演奏されている。最後にキーボードの音がディレイで残って静かに終わった。
 メンバー全員でステージ前方に集まり、礼。「今日は本当にどうもありがとうございました」という遊佐のMCの後もアンコールの拍手は止らない。

 そして遊佐が再度登場。バンドのメンバーを一人づつ呼ぶ。今回のツアー最後の曲は“Shadow of time”思わず、水色ツアーを回想する。Trionaが最初ヴォーカルを取り、遊佐が入ってくる。2人の「♪Alone alone shadow of time」というコーラスが美しく響く。そして終演。

 申し訳ないのだが、最後の遊佐の言葉を憶えていない。

 全体を振り返ると、「roka」の曲はアルバムに忠実な(まあ、当然とも言える)演奏であり、「roka」の持つ澄んだ美しさを忠実に再現したと言って良いであろう。
 しかし、昔のロックの手法で演奏する前提で書かれた曲に挑戦したのは良いのだが、結果が出たとは言い難い。極論をすれば、「Floria”「風の吹く丘”を日本勢だけで演奏していれば、ライヴ全体の評価はさらに良かったと思う。しかし、これは今回の「コラボレーション」という前提に反する行為であり、難しいところである。アイルランド勢の個性の強さ故とも言えるが。そして、これは言っておこう。遊佐未森はヴォーカリストであり、今回のステージの総監督でもある。つまり、自分のパートだけではなく、ライヴ全体の出来上がりの責任も負うという事だ。

 今回のライヴとアルバムでNightnoiseと共演という持ち玉を使った遊佐未森であるが、次回はどんなアルバムを作るのであろうか?意地悪く言えば、毎回Nightnoiseと演る訳には行かない。今回完成した遊佐の新しい世界をそのまま継続するのは無理なのである。正念場かもしれない。


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