The Soramimi Rock Music Museum

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1995 December 15th. Shin-Osaka Melpalk Hall


1998年12月14日 新大阪メルパルクホール
午後18時30分開場 午後19時00分開演

Set List

(演奏時間約110分)

Member


 開演時間定刻8分程度経過して、松田、寺師に続いて遊佐登場。場内に拍手が起こる。挨拶に続いて“天使のオルゴール”を二人のギターをバックに演る。

 折角の和気靄々なライヴを演出しようとしているのだから、遊佐と遊佐以外を一列に近く並べた方が良いのにと思う。スポットライトも遊佐に集中している感じ。

 今日は松田文は調子が良いようだ。正直、京都では元気の無い印象を受けたが、“ミント”を聴く感じでは切れが戻っている。多分に「いつもより多く弾いております」な寺師の手数を増やしたギターのイントロから入って二人の息が奇麗にあった演奏を繰り広げている。場内の手拍子も無く大人しい。遊佐はシェーカーを振りながら唄ったりしている。
 ここで、羽毛田、楠が入って来る。

 遊佐は金色のスパンコールのワンピースの上に薄物、肩には白い毛皮を羽織っている。松田文は白のシャツに黒のベスト、テラシは何故か三釦のスーツにネクタイ、羽毛田は茶色のジャケット、楠は深紅のシャツ。遊佐以外はちょっと寛いだ格好。
 “素肌”は楠のコーラスが強力。遊佐より声が大きい位。(笑)楠は爆発系のドラムでは無いが今回の編成にはとてもマッチしている。outroで羽毛田のピアノをちょっと聴かせて終った。
 羽毛田がキーボードに移動して“ミラクル”を演奏。
 楠はDrumsというよりはPercussionで、ドラムセットとしては叩かずに各種Perc.の百貨店状態である。音もロックの「ずっ」という重いバスドラムではなく、「ばん」という軽いチューニングにしている。
 金沢、京都では相撲を見た話であったが、今日はNightnoiseのトォリーナから電話がかかって来たというMCに変更した。クリスマスの話をちょっとして「皆さんのクリスマスはどんな感じになるのでしょうか。ここでピアノでも弾いてみようと思います。」というMCに続いて“逢いたい”を弾き語りで始める。サビのメロディーからギターが入って来る。正直、プログレ系の鍵盤の魔術師に慣れている私からすれば、同じバッキングを繰り返しながら弾いているだけだが、こういう遊佐は久々に観る気がする。
 寺師のストラトキャスターが海鳥の声を、楠のpercが潮の音を連想させる海の様なSEを作り出し“水の中”へ繋ぐ。
 MCでメンバー紹介。楠と低血圧話で妙に盛り上がっている。この後は各自の好きな飲み物を質問しながら続けていく。羽毛田は「ワインが好き」という話の後、トマトジュースの話に移行してしまう。寺師は「ミネラルウオーター」、松田文は「アルコールの入った飲み物」という回答。松田文は楠がpercを叩くと何故かゴリラの真似を始めてしまう。妙に乗っている。
 静かなギターのアルペジオから始まったのは初期の名曲“空色の帽子”であった。アルバムの数倍はダルな演奏で静寂な音、とでも表現すれば良いのであろうか。そして中間部で松田文のテレキャスターから弾き出された歪んだトーンと楠のフロアタムの連打が静寂を破り、静かに爆発していく。しばしのブレイクの後に再び、アルペジオとヴォーカルだけになり曲が終った。そして波のSEをバックにした羽毛田のピアノソロを挟み、かすかなピアノと共に唄われる“潮見表”に続いた。
 独唱で始まる“アカシア”は途中からテープのコーラスに続き、遊佐がピアノを弾きながら唄う。「アカシアという懐かしい曲を聴いて頂きました。」というMCの後、11月に亡くなった大村憲司の思い出を語った後、メンバーを呼ぶ。
 ちょっとテンポが速い“君の手のひらから”この曲はもう少々タメが欲しい。
 次に演奏されたのは“Silent Bells”である。確かに演ってもおかしく無い時期であるが、だんだんとテクノ寄りの音楽性に移行しつつある遊佐未森のライヴで演奏されたのである。ここでは楠均とのduetであった。僅かな打ち込みのリズムの上に乗る羽毛田のつま弾くkeyboardだけの極めて素朴な演奏。元の曲を思い出してみると、満艦飾な華麗なバッキングに乗った曲ではないか。まるで、たっぷりデコレーションを盛りつけるクリスマスケーキのスポンジだけを食べているような不思議な気分である。これが悪いというのでは無い。ただ、あの静かながらも華麗な90年頃の遊佐未森は終ったのだな、隣も楠均だし、という物悲しい懐古的な気分と同時に、まるで新しい歌を聴いている様な気分になったのである。「♪君に伝えたい」の部分で腕を前に広げる振り付けは金沢、京都では最後と最初の両方でやっていたが、京都で遊佐が最後の振り付けを忘れた為か、大阪では最初だけに変更。ちょっと寂しい。それとも二人共忘れたか。?
 アルバム発売日を宣伝した次は新曲の“ポプラ”これは英国臭は強くないが素晴らしい曲だ。懐かしい80年代AORをちょっと思い出させ、構成が唐突な所が無く、メロディーがしっかりした“タペストリー”系の曲だと思う。そして、サビの込められた思いを強く唄う辺りも良い。
 全体的に大人しい今日のライヴで一番活発な曲は次の“緑の絵”だろう。Nightnoiseの濁流のようなピアノでは無いのがちょっと残念だが、アンサンブルは大変良い。
 「次の曲が最後の曲になりました。」と共に、本編の最後は“Diary”余りにもQUEENな曲調は華麗なる英国ロックを愛する人々には涙無しでは聴けない。楠、羽毛田、寺師の男声コーラス隊も違和感よりもQUEENを思い出させてしまうという意外な効用。

 アンコールの1曲目は“レモンの木”この辺から客が徐々に立ち始める。曲が終ってシングルの発売日を訂正した後、「1、2、3、4」のカウントで“暮れていく空は”に入る。松田文がendingのソロを美しく決めていく。
 「どうもありがとうございました」と遊佐が告げ、再度引っ込む。

 二度目のアンコールは“川”途中の遊佐のリコーダーは音程が恐ろしくて正直褒められた物では無いが、まあ、御愛嬌でしょう。良く見ると、楠均が大阪からはリコーダーを一緒に吹いている。しかしヴォーカルは美しく、エコーを十分掛けた音作りは感動的。
 ステージには羽毛田と遊佐が残り、遊佐が観客に謝辞を述べた。最後に“聖しこの夜”を遊佐が1番はそのまま、2番はコーラスを唄う。最後に羽毛田がお遊びで“もう幾つ寝るとお正月”のフレーズを入れて、全ての曲が終った。「ありがとうございました。また来年お会いしましょう。」というMCと同時に新曲の“ポプラ”が場内に流されてライヴ終了。

 新譜のプロモーションも実験もせず、単純に美しい曲を素直に手駒の中から演る、敢えて上を狙わない様な構成は良い意味で勇気があると思った。
 今回のライヴは御起立、伴唄、手拍子お断りといったプログレ的観賞方法に近かった。最近の、前半新譜中心大人しめ、後半盛り上がり一辺倒的な展開は私は飽きてしまったし、盛り上がるのが好きなファンを置き去りにした展開は、実は心中望んでいたのである。もっと小さいライヴハウスで着席で観てみたいが、遊佐未森の人気が未だ高いのでちょっと無理だろう。


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